当座借越

銀行口座を開設して企業は、営業した代金の決済のために、日々当座預金口座を利用しています。預金の預け入れや引き出しを、繰り返しおこなっているのですが、資金繰りの悪化や、ちょっとした勘違いがきっかけで、預金の引き出し額が残高をオーバーした時はどうなると思いますか?

具体的には、当座預金口座に100,000円しか残ってないのに、商品の仕入300,000円の支払いのために、小切手を振出してしまった場合です。
銀行はとりあえず気をきかして不足分の200,000円を支払う・・・、なんてことはしてくれません。銀行は「できません」って、受取人に支払いを拒否するんです。当然に引き落とされるであろう支払いを待っていた仕入先の人なんか、できませんって拒否されて、くちポカーンですよ。口座残高がマイナス円なんてありえませんからね。

手形や小切手が、その支払いを受けることができない状態を、不渡りといいます。不渡りになってしまった小切手を不渡小切手といいます。
銀行は1回目の不渡りは許してくれますが、2回目に不渡りをだすと、銀行協会加盟の金融機関の取引停止となり、事実上の倒産になります。

事実上の倒産というのは、倒産には違わないのですが、なにが違うのかというと

手形・小切手での受け取り、支払いが一切できなくなります。

2回目の不渡りで、銀行間の取引停止になるわけですが、「それなら、銀行の口座なんか使わないで、直接現金で取引をすればいいじゃないか」と思うのですが、無理なんですよね。取引先に「うち銀行の口座持ってないから、現金は手渡しで支払ってくれ」なんてできませんしね。場合によっては、約10キロ分ですよ。当然嫌がられます。

それに「あの会社お金ないぞ、危ないぞ!!」ということが広まっているので、素直に取引をしてくれる会社なんかありませんね。

当社 「すいません、商品を仕入れたいんですけど、これ下さい。」
A社 「売ってもいいけど本当に支払ってくれるの?」

お金を支払ってくれるのかどうかわかりませんから、仕入先は、不渡りを出した会社とは、取引に消極的になってゆき、商品を仕入れることさえ、ままならない状態になっていきます。
こんな状態では、健全な経営なんかできませんね。風船のように徐々にしぼんでゆきます。

というように、いくつか理由がありますが、もう陸へ上がった河童状態です。慣用句あってるのかな?とにかく何もできません。
あとはじわりじわりと会社の死(倒産)をまつばかりになります。法律上は企業として存在はしていますが、実際はもう生きていないのも同然ということです。だから「事実上の倒産」と表現しています。実務では、一回目の不渡りでも、アウトです。結局は企業の信頼を失うんですね。遅かれ早かれ、1回目でも2回目でも。

当座借越契約

しかしすごい話ですね。
人間が呼吸するのと同じように、企業はお金を出し入れするんですね。お金の流れがとまれば、呼吸も止まるんだと・・・

こういう起きてしまったら致命的になる事態に備えて、企業は一時的に立替払いをしてくれる、当座借越契約(とうざかりこしけいやく)を結ぶことができます。
銀行と契約をあらかじめ結んでおくことによって、もし残高を超えて小切手を振出したとしても、銀行がかわりに、超過額分を支払っておいてくれるんです。これにより不渡りを防ぐことができます。立替払いといっても性質は普通の借金です。ですので契約を結ぶ際は、担保が必要になり、こうした取引を簿記ではどのように処理をするのかが問題になります。

それでは簿記の勘定処理の話につづきます。経済事象の話を思いだしながら、考えてくださいね。
以下は当座借越契約をしている企業が、実際に銀行残高を超えて、小切手を振出した場合の仕訳です。

簿記で記録をするタイミングとしては、

「残高を超えてしまった場合」
「返した場合」

に記帳することになります。これはいいですね。

あと、仕訳のしかたが一勘定制と二勘定制の2通りの方法がありますが、勘定処理上の問題なので、結果は変わりません。記帳の仕方をそれぞれ両方おぼえてください。

当座借越の勘定処理

  • 【例題】
  • 広告費200,000円を小切手を振出して支払った。
    なお、当座預金残高は150,000円で、取引銀行とは当座借越契約を結んでいる。

問題文を少し読むと、この会社の当座預金口座には現金が150,000円預金されていて、広告費を支払うために、小切手を振出そうとしています。振出すのはいいのですが、そのときの預金残高より150,000-200,000で△50,000円多く、支払いをしようとしています。ですが、銀行と当座借越契約を結んでいるので、50,000円の金額が借り越されることになります。

例題より、企業が契約を結んでいる場合借り越される50,000円分は借金なので、

預金残高 :
0円
借越金額 :
50,000円

という状況になります。一勘定制でも二勘定制でも一瞬、別々のことをするのかな?と考えがちですが、預金残高と借越金額の結果は同じですから、ここはわすれないでおぼえておいてください。

二勘定制の場合の勘定処理

<残高を超えてしまった場合>

二勘定制は当座借越勘定科目と当座預金勘定科目の2つの勘定科目をもちいる方法です。当座借越勘定は負債になります。当座預金に残っている金額は200,000円で、次に広告費150,000円を支払いました。オーバーした50,000円分は借金の当座借越勘定に記入します。

  • (借方)
  • 200,000
  • (貸方)
  • 150,000
  • 50,000

原因・結果を考えて、

「広告費200,000円が増えて」
「当座預金残高が減ったと同時に、借金が増えた」

というように当座預金勘定科目を減らす仕訳と、当座借越勘定科目を増加させる仕訳を同時に行うかたちになります。

各勘定口座からみた場合はこうなります。

  • 150,000
    150,000
  • 50,000

当座預金だけをみたら預金が0円だから安心だ、と思わせておいてよく調べてみたらじつは、裏では借越があったなんて、なんかだまされた気分ですね。

<返した場合>

今度は返済時です。

いままでの状態で、当座預金口座に100,000円で現金の入金があったとしましょう。
この場合、真っ先に今ある借越残高から、自動的に差し引かれます。借越を残してはダメなんだそうです。そういう契約なんですね。

借金、借越は50,000円でしたから、入金額の分が借越残高より上回っているので、当座借越勘定は0円に、入金された金額から借越金額を引いた残りの50,000円分は当座預金勘定へ、いつも通りに記入されます。

  • (借方)
  • 50,000
  • (貸方)
  • 100,000
  • 50,000

当座預金と当座借越の勘定口座の動きはこうなります。

  • 150,000
    150,000
    50,000
  • 50,000
    50,000

当座借越は0円になり、当座預金勘定には借方と貸方を集計して50,000円の残額が残った状態です。

次は、当座借越を二勘定制の場合で仕訳をしましたが、今度は一勘定制で仕訳をしたばあいの話に続きます。

一勘定制の場合の勘定処理

一勘定制の場合の簿記処理は、当座勘定を使います。当座勘定というのは、当座預金勘定(資産)と、当座借越勘定(負債)をあわせた勘定で、預け入れは借方へ、振出しは貸方に記入するという特殊な勘定です。
混合勘定(こんごうかんじょう)または中間勘定といいます。

二勘定制の場合だと、当座預金に入金されたときに、借越の残高がいくらあるのかいちいち調べなくてはいけないんですね。手続きが煩雑になります。ですので発想をかえて、合わせちゃおうと考えます。一勘定制を採用した企業は、銀行口座の入出金はすべて当座勘定科目一つだけでおこなう、当座預金の勘定科目はつかわない、と決めるんです。

銀行の預金口座へ入金があれば当座勘定科目の借方へ記入し、また預金口座から出金があれば当座勘定科目の貸方へ記入します。
こう記帳していくことによって、最終的に当座勘定科目の残高が、借方ならば預金があるとわかります。逆に、残高が貸方ならば、借越になっているな、とわかるという仕組みです。

理屈をいえばこんな説明になりますが、実際にみたほうが早いです。
ということで、先ほどのと同じ例題をもうひとつの記録方法、一勘定制の場合で仕訳をしてみましょう。

当座勘定残高が借方に150,000円あるところからです。

<残高を超えてしまった場合>

そして広告費として銀行口座の預金残高を超えて、支払いをしてしまいましたと、そのときの一勘定制の場合で仕訳をすると

  • (借方)
  • 200,000
  • (貸方)
  • 200,000

と仕訳をします。借越額を計算しなくていいので便利です。混合勘定なので、資産が減るとかは考えずに、増えたら左側(借方)、減ったら右側(貸方)と考えます。この状態での当座勘定口座では、

150,000
200,000

と、当座勘定科目を計算してみると、当座勘定は差し引き貸方で残高が50,000円なので、借越が50,000円あるとわかります。

<返した場合>

今度は一勘定制の場合の返済時です。二勘定制の時と同じ状況で、当座預金口座に100,000円現金の入金があったとします。そのときの仕訳は

  • (借方)
  • 100,000
  • (貸方)
  • 100,000

とそのままの金額を記入します。

また、借方と貸方を集計して、計算した時に、当座勘定が左側にあったら、資産(二勘定制でいう当座預金にあたります)、右側にあったら負債(二勘定制でいう当座借越にあたります)というように扱うので、この例題の場合、当座勘定科目の集計をすると

150,000
200,000
100,000

借方は当座預金の残高分150,000円と入金分の100,000円を足した250,000円から、貸方は広告費として支払った200,000円を引くと、残高は50,000円で借方になり、帳簿の勘定口座から銀行の預金には50,000円がのこっているんだな、ということがわかります。

ということで一勘定制と二勘定制のおおまかなちがいは、二勘定制は計算するまでいくら残っているのかわかりづらい点ありますが、一勘定制は、補助簿に転記した時点でいくら残っているのかすぐにわかる、という利点があります。