売掛金と買掛金

商品代金を決済する時、通常は現金で支払いが行われますが、支払時に信用がある得意先の場合、支払をツケ払いにすることができます。

ツケというのは、そのときに支払いはせずに、1ヶ月または1週間ごとなどに、まとめて後日支払う慣習のことですね。普通はお金を支払わずに、商品を持ち帰ったら犯罪です。

なぜ持ち帰っても泥棒扱いされないのかというと、信用があるからですね。ツケで支払うことができるのは、お互いの信頼があって成り立っているんですね。

得意先から毎日商品を仕入れていれば、お互いそれなりに処理手続きが煩雑になります。それならば「まとめて月末に支払ってくれればいいよ。」という方式をお互いの信用の上で採用することにしました。

この一連の取引を、信用取引といいます。どちらかというと簿記用語というよりは、経済・金融用語です。商品を仕入れる、売る、などの取引をする場合、企業間では信用取引はよくあることです。

個人で行う信用取引だと、クレジットカードもそうですし、銀座のクラブも信用取引を行っていますね。

このページは、企業どうしで商品売買の信用取引をした場合、簿記ではどのように処理したらいいのか、という話になります。

売掛金と買掛金

まずは問題です。

  • 【例題】
  • A商店はB商店から商品100,000円を仕入れ、代金は掛とした。このときのA商店、B商店それぞれの仕訳をしなさい。

商品売買などで、商品の代金を後日支払う約束をする取引がありますが、この取引を掛取引といいます。信用取引の一種です。商品を売買するとき、その場で代金を支払わずに一週間や一ヶ月など、一定期間の取引額を合計して、あとでまとめて決済をします。ちなみに反対の意味は現金取引ですね。

掛取引というのはいったいどのような状態なのかというと、通常の取引、たとえばコンビニなどお店に行って、パンなどを買おうとしたとき、レジにパンを持っていって「これを下さい」と代金を支払います。

企業やお店の場合も同様に、買った商品を販売するという点では個人とは異なりますが、購入をします。このとき、商品を受け取るという行為と、代金を支払うという行為は、ほぼ同時におこなわれています。

通常の取引の場合

通常の取引

ですが、問題文の場合、A商店はB商店から売買代金を後日支払う約束で、商品を仕入れています。

商品を受け取るという行為は行われていますが、A商店はB商店に代金を支払うという行為はおこなわれていない、同時ではないという状態です。

掛の取引の場合

掛の取引

この状態が商品を掛取引で行った場合になります。

また商品を売ったという事実にかわりはないので、法律では、「B商店はA商店から、販売した代金を受け取る権利(債権といいます)が発生し、またA商店はB商店に購入した商品の代金を支払う義務(債務といいます)が発生した」なんていいます。この債権・債務という概念は、試験には直接出題されませんが、重要なのでおぼえておいてください。この問題の場合は、B商店はA商店に対して、商品の代金を請求することができる権利がある、ということになります。

A商店はB商店から売買代金を後日支払う約束で商品を仕入れ、そしてその代金は後日まとめて精算されるという流れになります。決してタダで持ち帰っていいというわけではないんです。

A商店の場合

企業や商店が掛取引を行った場合、仕入れは仕入勘定科目で処理をしますが、相手勘定科目は買掛金という負債の勘定科目を使用して記録をします。

買掛金勘定科目はB商店からすると債務にあたります。いつか支払われなければならないものなんですね。ですから買掛金勘定科目は5勘定のうち、負債に該当します。

  • (借方)
  • 100,000
  • (貸方)
  • 100,000

B商店の場合

今度はB商店の立場にたったときの仕訳です。B商店は商品を売った側になります。掛取引で商品を売った場合、売上としてそのまま帳簿に記録します。そして相手勘定科目は、売掛金勘定科目を使用します。

  • (借方)
  • 100,000
  • (貸方)
  • 100,000

売掛金勘定は資産の勘定です、A商店からすると売掛金は債権にあたります。商品の販売代金はいつか回収されるべきものです。ですので、売掛金は資産の勘定になります。

買った時のツケは買掛金、売った時のツケは売掛金とおぼえておいてください。商品売買の代金をツケで払ったというところがポイントで、掛取引を行った時の簿記処理は、売掛金・買掛金勘定という別の勘定科目を使用して記録をします。