返品と値引

前ページでは販売目的で商品を仕入れたとき商品を売り上げたときの記帳のしかた三分法や、また掛けで商品販売したときの取り扱い売掛金・買掛金を学習しました。そして次は返品と値引きについてです。

返品と値引とは

販売目的で商品を仕入れようと仕入先へ注文し、商品を確認したところ、送られてきた商品に傷がついていたり、また注文したときの数より数量が合わなかったりすることがあります。こうなったときにどう簿記処理をしていけばよいのかという話です。

実際には企業が商品販売をしていて商品販売時にトラブルが起こるケースというのは多々あるのですが、試験簿記の学習上では

  • 返品
  • 値引き
  • 割戻し簿記1・2級
  • 割引簿記1・2級

この4つのケースしか出題されません。このうち割戻し、割引は簿記3級の出題範囲ではないので説明は省きます。

返品
返品というのは、仕入先から仕入れに一度発送された商品を、品違い、汚れ、破損などの理由で仕入先に返すことです。返品するということですので、品物はなくなることになります。値引きとの違いはここだけです。
値引き
値引きは仕入れた商品が、汚損や傷物などの理由で商品価値が減少した場合、仕入先にクレームを申し出て、商品の一部を値下げしてもらうことです。返品と違うところは商品はてもとに残して、値引いた代金分だけを返してもらうというところが返品との違いになります。

商品の返品・値引きの考えは、特に問題はないと思います。商品に傷がついていたので値段を安くしてもらうという、みなさんが知っている返品・値引きのイメージと一緒ですね。
それでは確認のために問題をといてみましょう。

  • 【例題】
  • 現金で仕入れた商品5つ(1個あたり1,000円)のうち、2個を返品した。

返品時の仕訳

仕入れた商品を返品した時に、どのように仕訳をすればいいのかというと、考え方としては、返品は仕入取引の取り消しと考え、取り消す仕訳をすればいいんです。

取り消す前の状態、仕入れた時の仕訳は、商品を仕入れた時に、1,000円の商品5つで、

  • (借方)
  • 5,000
  • (貸方)
  • 5,000

と問題文から三分法でこのように仕訳をしているはずです。これを取り消す仕訳をすればいいんですね。というわけで返品時の仕訳は、

  • (借方)
  • 2,000
  • (貸方)
  • 2,000

商品を2つだけ返したということなので、2つ分を取り消す仕訳をします。
金額に注意してください、金額は取り消す分の金額1,000×2個で2,000円になります。

こうすることによって、帳簿上の仕入勘定科目には、はじめ5つ分の商品を記入されたあと、そのあと2つ分取り消される仕訳をすることによって、最終的に仕訳勘定科目には3つ分の商品が残るということになります。

5,000
2,000

また、問題文で、仕入れた時の相手勘定が現金ではなく、掛で行われる、掛で仕入れたという掛取引の場合は、買掛金勘定を使用して仕訳をしているはずなので、

  • (借方)
  • 2,000
  • (貸方)
  • 2,000

と買掛金勘定を使用して同じく取り消しをします。勘定科目がかわるだけです。

返品・値引きの場合の簿記処理は、最初にした仕訳の反対の仕訳をして相殺をする、というところがポイントです。

この仕訳を反対仕訳、逆仕訳とよんだりします。簿記の勘定記録法の性質をうまく利用したテクニックですね。
消しゴムで金額を消して、書き換えてはいけないんです。

値引き時の仕訳

返品時とおなじように反対仕訳をします。

  • (借方)
  • 2,000
  • (貸方)
  • 2,000

少し細かいところになりますが、返品・値引きの仕訳は最終的には同じ内容の仕訳をすることになるのですが、原因となる理由、返品は品物がない、値引きは品物があるという微妙ですが違いはあるんだ、ということは覚えておいてください。