総合原価計算の基本

この章では総合原価計算について学習します。製品ごとに原価を集計する製品別計算には、個別原価計算と総合原価計算がありますが、個別原価計算と総合原価計算の違いを意識しながら読み進めて下さい。

総合原価計算とは

総合原価計算とは、標準規格製品を大量生産して販売する場合に用いられる原価計算の方法で、一定期間まとめて計算した完成品総合原価を、完成品量で割ることによって、1個あたりの製品原価を計算する、製品原価計算の第3段階目にあたる製品別計算になります。

総合原価計算は大量生産形態に向いていて、第1段階の費目別計算、第2段階の部門別計算ときて、第3段階の製品原価計算の原価計算になります。

大量生産というのは、ベルトコンベアに乗って製品がグルグル動いているような、一般的にみんなが思っている大量生産のイメージで大丈夫です。材料が投入され、工員さんが加工作業をし、完成した製品が次々と倉庫に並び始めているようなイメージです。★1

まず前提として、第3段階の製品原価計算をするということはこの時点で、費目別計算と部門別計算は終わっているということになり、直接間接・材料費労務費経費は全て集計されて仕掛品勘定へ振り替えられているという状態になります。

そのような状態の中、私たちは「製品1つの原価を知ること」という原価計算が目的でしたが、大量見込生産形態をしている工場の製品1つの原価をどのようにして求めたらいいのかというのが、総合原価計算の論点です。

どうればいいのかというと、総合原価計算のポイントは、標準規格製品の大量見込生産形態ということで、大量生産というのは、材料や加工の方法は同じ、いわゆる同質同形の製品がつくりだされていることなので、それならば1つ1つ製品の原価を計算するより、原価も完成した製品の数量で割ったとしても原価計算上は問題がないと考えることができます。よって総合原価計算は完成品総合原価を期間中に生産した完成品量で割ることで、1個あたりの製品原価を求めます。

具体的には、例えば工場でジュースを作っているとして、原価計算期間のジュースの材料費、労務費、経費を全て含めた製造原価が1,000万円で、完成したジュースが10万本できたとします。そのときのジュース1本あたりの原価は1,000万円÷10万本で100円となり、このように原価を完成品数量で割ることによって、1個あたりの製品原価を求めるのが総合原価計算の基本的な考え方になります。なぜこういう原価の計算ができるかというと、製造された製品が質も量もほとんどおなじ同形同質だから可能なんですね。

反対に大量生産ではない、オーダーメイドのような、製品が標準規格ではない製品を製造している工場では、総合原価計算は適用されることはなく、個別原価計算という原価計算の方法で原価計算が行われることになります。個別原価計算については個別原価計算の章でお話ししました。

また総合原価計算では、大量生産を行う形態によって単純総合原価計算、工程別総合原価計算、等級別総合原価計算、組別総合原価計算という計算方法があり、それぞれの製品生産形態に合わせて原価計算を行うことになります。ここも別章で学習します。

  • ・単純総合原価計算 単一製品1種類のみの原価計算
  • ・工程別総合原価計算 同一製品2工程以上の原価計算
  • ・等級別総合原価計算 同種複数製品の原価計算
  • ・組別総合原価計算 異種複数製品の原価計算

まずは簡単な単純総合原価計算から話を進めていきます。

勘定連絡図

勘定連絡図はこんな感じです。

総合原価計算勘定連絡図
総合原価計算勘定連絡図

総合原価計算は直接材料費と加工費に分けて月末仕掛品と完成品原価を計算するという流れです。個別原価計算とほとんど変わりません。材料費・労務費・経費・仕掛品があり、変わったところは製造間接費がなくなって新しく加工費という勘定が登場しているくらい。加工費というのはどのような原価なのかは、次の節でお話します。

加工進捗度

製品がどれくらい加工が進んでいるかの完成度のことを加工進捗度★2といいます。加工をはじめた最初の0%のことを始点といい、製品の加工が終了して100%になった点を終点といいます。100%になったら完成品となります。

加工進捗度は物理的な完成度合という意味ではなく、原価に対しての投入割合だということも覚えておいてください。なので始点からの早い段階で費用を90%分投入したとしたら、進捗度は90%ということになります。大量生産形態を計算する総合原価計算だからこそできるんですね。

総合原価計算の原価の分類

総合原価計算では製造原価を材料費と加工費に分けて計算します。総合原価計算における材料費は、直接材料費のことを指し、残りの製造原価を加工費とします。

製造原価
製造直接費製造間接費
材料費直接材料費間接材料費
労務費直接労務費間接労務費
経費直接経費直接経費

直接材料費以外はすべて加工費に分類されます。なぜ直接材料費と加工費に分けるのかというと、製品が製造している過程で、原価要素の発生の仕方が異なっているからです。

材料費(直接材料費)

材料費は製品の材料に掛かった原価です。

総合原価計算の材料費は、投入時に全額発生する原価で、通常は製品を作る時点で材料は全て投入されているはずなので、作業工程が進んだとしても材料費は増えることはなく、途中で材料を追加する場合を除いて、進捗度が始点であっても100%になります。製品1個分に含まれる材料費は100%なので、完成品1個分からみた製造費用はやはり変わらず1個分ということになります。

材料費のイメージ
0%
50%
100%

簿記試験の問題文では、「材料はすべて工程の始点で投入する」とか指示があるので問題文に従ってください。工程の始点で投入された材料費は、加工進捗度がどの時点であっても原価が100%含まれているといえます。

加工費

加工費は製品の加工にかかった原価で、原価要素の中で直接材料費以外の原価要素になります。加工費は例えば工員の作業時間や電気代のように、製品の完成度が進めば進むほど、原価が多くかかっていくことになるので、加工費は加工が進むにつれ徐々に発生する原価というのが特徴です。

個別原価計算では、直接費と間接費とに分けて集計していましたが、総合原価計算では基本的に1つの製品をたくさん作っている大量生産形態なので、製造直接費と製造間接費に分けてもあまり意味がありません。なので材料費以外は加工費としてまとめてしまおうということになります。

加工費のイメージ
加工費のイメージ
0%
50%
100%

始点時の加工費と終点時の完成品1個に含まれる加工費は異なることになり、加工費の計算は、完成品からみてどのくらい加工が進んでいるかを換算して計算することになります。これを完成品換算量★3といいます。加工費は始点で0%で、終点で100%なので、中間時点では50%になり、加工進捗度が50%時点の加工途中の原価は、完成品からみて50%分の原価が投入されていると言うことができます。

材料費は全額発生する原価、加工費は徐々に発生していく原価と原価要素の発生の仕方が違うので、別々に計算されることになります。