当座預金

企業では当座預金という銀行の預金口座を使用しています。簿記のことはすこし置いといてもらって、まずは、当座預金と当座預金勘定の説明から。

当座預金とは

当座預金は、「預金」とつくからには、預金の一種なのですが、一般的に預金ときいてすぐに思い当たる、普通預金とは別の預金口座です。
預金といえばほかにも、一定額を一定期間預けて、しばらくの間引き落としができないかわりに金利が高めに設定されている定期預金など、預金の種類はいくつかあります。
預金区分によって受けるサービスが違うんですね。

では、当座預金はどんな特徴なのかというと、


利息がない。(金利0%です)
通帳がない。(小切手を使います)

利息がないんです。法律で利息をつけることが禁止されています。

私はこれを知った時、「え??じゃあ預けるメリットないじゃん!!ムダじゃん!」と思ったのですが、実はメリットがあるんですね。

というのは、現金勘定-小切手でお話しした通り、手続きの煩雑さと、多額のお金を持ち歩くのが不便で危険だからという理由なんです。

自分以外の他の人が、銀行口座から現金を引き落とすのって手間がかかりますよね。

例えば、携帯電話、ガス・水道料金の口座引落としなど、ドコモとか、KDDI、に指定して、書類に書いて引き落としする手続きをしますよね。

「この人からの引き落としは、許可しますよ、引き落とし依頼があったら支払ってあげて下さい」と銀行に届けているんです。

そしてその引き落とし先も、ひとつずつしか指定できません。

個人では、口座引落とし先なんて、数は多くはありませんからいいのですが、企業の場合は支払い先が日々めまぐるしくかわるので、そのつど銀行に届けるのもめんどうです。

そこで少し発想を変えて、銀行との契約する条件を、

「この証券をもっている人には、引き落とししてください、支払ってください。」

というふうにしたわけです。

こうすることによって、小切手をもっている人であれば、いつでもすぐ支払い、決済の処理がスムーズに進むようになります。引き落とし先をいちいち指定しなくてすみます。便利ですね。これはおぼえなくていいですが、小切手の性質は支払委託証券だとかいわれてたりします。

また、銀行側が処理をしてくれるので間違いも少なくなります。

また「いつでも引き出せる」ということは、現金をもって歩くのとほぼ同じ(自由度が高い)ことなので、商取引での決済専用口座としてはもってこいなんです。持ち運ぶのも楽ですし。というメリットがあります。

当座:
(1)物事に直面した、すぐその場。即座。
(2)さしあたっての、その場。目下のところ。

goo辞書より

と辞書に載っている通り、預けるというよりは一時的に置くという意味合いが強いようです。
もともと資金運用目的の口座ではないんですね。

小切手の振り出し・決済

次に小切手を振出した後、どういうふうに処理をされ、支払いが決済されるのか、一般的な流れを図で示しておきました。

小切手の一連の流れ

まず企業はA取引銀行へ当座預金口座を開設し、A取引銀行は預金通帳のかわりに企業へ小切手帳をわたしています。(交付)

そして企業は、商品購入などの支払いのために小切手帳に必要金額を記入し、ビリビリと小切手帳からきりはなして、仕入先などの受取人に小切手を手渡します。
振出(ふりだし)といいます。

小切手をうけとった仕入先(受取人)は、振出しもとのA取引銀行へ直接持ち込むか(呈示ていじといいます)、自分と取引をしている銀行に「お金取ってきて」と依頼をするかのどちらかの手続きをします。

無事引き落としが完了したら、口座引落連絡が、小切手を振出した企業へ「○○円引き落としました」と連絡がいきます。

これが小切手の基本的な流れです。

次に当座預金の簿記処理についてです。例によってタイミングです。
簿記は「経済活動の記録」でしたね。というわけで当座預金の簿記処理は、

「預入れた時」「引出した時」

というそのままです。記帳のタイミングに気を付けて下さい。

当座預金勘定の処理

預入れた時の勘定処理

当座預金口座が増加する場合は、現金を当座預金口座に預入れた時、売上げ金を回収した時など、ケースはいろいろあります。

  • 【例題】
  • 10月5日 金庫にある現金10,000円を、銀行の当座預金口座へ預け入れた。

当座預金の口座金額が増えた場合は、当座預金勘定(資産)を増加させます。

  • (借方)
  • 10,000
  • (貸方)
  • 10,000

と仕訳をします。てもとにあった現金を銀行の当座預金口座へ移したことになります。借方ですね。

ちなみに、支払いが現金ではなく小切手だった場合、小切手で支払いを受けた場合、その時の勘定科目は、現金で仕訳をするんでしたね。小切手は通貨代用証券ですから。

その受け取った小切手は、振出し日からおおよそ10日以内に、指定銀行で現金と引き換えるか、取引銀行に取り立てを依頼するという処理をします。

そのときの勘定処理なのですが、現金と引き換えた場合は、通貨代用証券は現金勘定科目で仕訳をしているはずなので仕訳はしません。

また、取立を依頼した場合は、銀行経由で当座預金に入金されるので、当座預金勘定科目を増加させる上記の仕訳をすることになります。どこに小切手を持ち込んだのかで仕訳がかわってきます。

あともう一つ、会社へ持ち帰って金庫にしまわず、ただちに取引銀行に預け入れたという場合があります。この「ただちに」というところがくせものです。
その時は、現金勘定科目で仕訳はしないで、当座預金の勘定科目で処理をします。現金勘定仕訳の分を飛ばしたんだ、と考えればいいと思います。実務ではこのパターンが多いようです。小切手を会社に持ち帰ってもあまり意味がないですから。受け取った帰りがけに、銀行へ預けてしまうようです。

【例題】
 7月12日 関東商店から売掛金20,000円の同店振出しの小切手で受け取り、ただちに九州銀行に預け入れた。
  (借方) 当座預金  20,000  (貸方) 売 掛 金 20,000

売掛金とか、まだわからないかもしれませんが、気にしないで、預金がふえたらこんな感じなんだという、雰囲気だけつかんでください。

引出した時の勘定処理

当座預金口座の現金の引き出しには、銀行によってはキャッシュカードを使って、普通預金のように引き出せるところもあるようですが、基本的に小切手を使用して引き出すことになります。これを振り出しといいます。「振出し」ってなんか特有の言い方ですね。でもそう使うらしいです。

試験問題で、「小切手を振り出した」という表現を見たときは、すぐ当座預金勘定の減少を思い浮かべてください。

  • (借方)
  • ×××
  • (貸方)
  • ×××

また、当座預金勘定を減らすときのタイミングですが、これは振出した小切手を、受取人が取引銀行から換金した時ではありません。
金額を記入して、小切手帳から小切手を切り離した時に(振り出した時)に、もう仕入先の支払いはすんだものと考えます。
ですので、相手に小切手を渡すのを忘れて、金庫に眠ったままにしていたとしても、振出したらその時点で、当座預金勘定を減らす仕訳をすることになります。
そのため、小切手をうけとった受取人が銀行へ換金するまでの少しの間、銀行口座の実際残高と帳簿上の残高との間には、時間差で金額のズレがでることになります。簿記3級では出題されませんが、少し頭の片隅にでも置いといてください。

【例題】
 5月25日 東京商店から10,000円の商品を仕入れ、代金は小切手で支払った。
  (借方) 商  品  10,000  (貸方) 当座預金 10,000

この時の仕訳の原因が商品の支払い10,000円なので、仕訳のルールに従って、

原因「商品が10,000円増えて」
結果「当座預金が10,000円減った」と考え、

  • (借方)
  • 10,000
  • (貸方)
  • 10,000

と仕訳をします。

自己振出小切手を受け取ったとき

小切手を受け取ったとき、その小切手が自分の振り出したものだった時があります。これを自己振出小切手(じこふりだしこぎって)といいますが、自己振出小切手を受け取ったときは、現金勘定科目を増やさず当座預金勘定科目の増加として処理をします。

なぜかというと、少し考えてほしいのですが、小切手を振り出したときに当座預金勘定を減少させているわけですが、その小切手が銀行で換金されることなく、自分のところへ戻ってきたということで、当座預金勘定の減少を取り消す処理をするということになります。

  • 【例題】
  • 関東商店は東北商店に1,000円を売上げ、代金は以前に関東商店が振り出した小切手で受け取った。

振り出した時にはおそらくこういう仕訳をしているはずです。

  • (借方)
  • 1,000
  • (貸方)
  • 1,000

これを取り消す仕訳をします。

  • (借方)
  • 1,000
  • (貸方)
  • 1,000

自己振出小切手は現金勘定としないようにしましょう。