前払金・前受金

その他の債権・債務、前払金、前受金に続きます。

商品を仕入れるために、その代金の全部または一部を仕入先に前払いをすることがあります。

この商品売買時に、商品の受け渡し前に支払ったり、受け取ったりする内金や手付金は、あらたに勘定科目の前払金(資産)、前受金(負債)を設けて処理をします。

前払いのイメージは大丈夫でしょうか?身近なところでは、今はあるのかわかりませんが、発売前のCDアルバムなんかを予約をしに行ったときにあったりしますね。

購入しようとしていたCDアルバムがたまに発売日に手に入らないときがあるので、発売日に必ず手に入るようにするために、CDショップへ予約をしに行きます。そのときにCDの予約注文と同時にCDアルバムの一部のお金およそ500円くらいを先に支払います。

そして発売当日、予約引換券をもってお店にいき、あとはCDアルバムの残金分を支払って、こういう手続きを経て、発売日にCDアルバムが手にはいるんですね。今はCD買うためにこんなことしないのかなぁ・・・。

(CDを買った帰りに入り口付近の新作の棚をみたら、予約したCDが普通に並んでいたりすることはヒミツ。)

そして、この商品金額の一部500円というのが、内金や手付金といわれる前払いにあたります。

また、逆にお店の側の立場になってみると、この受け取った金額の一部500円というのは内金・手付金ですね。

この内金はなんなのかというのを一言でいうと、「さきにお金払っておいたから時期が来たら、ほかの人にわたさずオレに商品をちゃんと渡せよ。」という意味合いですね。

内金や手付金の厳密な違いは法律の分野であって、簿記の分野ではないので省略します。

次に内金・手付金の債権・債務を図で確認してみましょう。

前払金前受金

こんな感じです。

商品の移動は何も行われてなく、また金銭の移動もまた一部だけしかおこなわれていませんね。

購入者は商品の代金の一部を支払ったというだけなので、残りの商品の代金を支払う債務が生じていて、同時に商品を受け取る債権が生じています。

また、商店は購入者に商品を引き渡さなければならない債務が生じて、代金を請求できる債権が生じています。

ということで、前払金・前受金のページでは、受け取った、また支払った内金や手付金を簿記でどう記録をしていくのかが問題になります。

ちなみに、掛の取引の場合は、商品は渡っていて、代金がまだというケースでしたね。

どちらにしても、お互いにおたがいの債権・債務を持っているという状態が内金・手付金になり、この状態をどのように簿記で記録をしていくのかが問題になります。

では例題を。

  • 【例題】
  • 6月10日 岡山商店は、山口商店より、商品500,000円の注文を受け、内金として200,000円を現金で受け取った。


    6月17日 山口商店は、岡山商店から注文していた商品を受け取り、前払金との差額は掛けとした。


    このときの岡山商店、山口商店それぞれの仕訳をしなさい。

問題文は、山口商店が商品の注文をするために、岡山商店へ予約金を支払い、後日受け取ったという内容ですね。

予約金受取時・支払時

この時点では、予約金を受け取ったというだけで、岡山商店は商品の引き渡しも、商品代金のすべての受取りも、うけていないので、売上にすることはできないんです。

また同様に、山口商店も仕入勘定科目に含めることができません。

ということで6月10日の岡山商店、山口商店の仕訳は

岡山商店6月10日

  • (借方)
  • 200,000
  • (貸方)
  • 200,000

山口商店6月10日

  • (借方)
  • 200,000
  • (貸方)
  • 200,000

このように、仕入・売上勘定科目は使わないで、支払った岡山商店は前払金(資産)、受け取った山口商店は前受金(負債)勘定科目をそれぞれ使用して仕訳をします。

このように仕訳をすると、予約金は資産、負債として記録されることになり、岡山商店は商品を引き渡さなければならない債務、山口商店は商品を引き渡すように請求する債権があるんだなということが貸借対照表をみたときわかるんですね。

商品引渡し時・受取り時

そして6月17日に実際に商品の受け渡しが行われたということで、この時点で改めて売上、仕入に含めることになります。

岡山商店6月17日

  • (借方)
  • 200,000
  • (貸方)
  • 500,000
  • 300,000

山口商店6月17日

  • (借方)
  • 500,000
  • (貸方)
  • 200,000
  • 300,000

岡山商店は、債務だった前受金勘定科目を借方に、山口商店は、支払っていて債権の状態だった前払金を、貸方に記入します。

こうすることにより、前受金・前払金は口座上ゼロになり、残りは受け取った現金と、売掛金、買掛金、売上、仕入という商品売買のおなじみのパターンになります。

以上が前払金・前受金の簿記処理についてでした。